御田町　桃の木
（中華料理屋の理想形）

　中華の料理人のポテンシャルは驚くほど高い。が、個人プレーによるところが大きい。有名人お薦めの中華に行ってみたがちっとも美味しくなかったということがよくある。これは、その有名人の味覚がおかしいのでなく、本人が行ったときは調理長がその有名人のために特別に気合を入れて調理し、普通の客がふりで行った場合は調理長が作ってなかったという理由による場合が多い。万事コネがものをいうこういった出来事を中華文化の極みとして評価する人もいうが、僕はフレンチに比べた場合の後進性と位置づける。ならば、店の規模を抑えて、常に調理長が先頭に立って鍋をふるったらどうなるか。御田町桃の木にはその答えがある。しかし、これは言うは易し、行なうは難しの世界である。体力的な問題もある、道理をわからない客の早く出せという非難に耐える心の強靱さもいる、店の規模を大きくしたいとの誘惑に打ち勝つ信念もいる。この店がいつまでこの体制を維持していけるかは未知数である。ただ一つ確実なのは、この体制を維持している限り、僕はここに通い続けるということである。