　僕、外食大好きです。（第１２９回－香港再訪(1) －）

　夏休みの終わりに家族で香港に行った。今年で切れるマイレージを消化するために最初は関西に行くつもりだった。プールさえあれば子供たちはご機嫌なので、屋外プール付きのホテルを探したが、意外と少ない。前にも書いたが、今のホテルは敷地の問題と通年使える施設ということで室内プールが主流で昔のような屋外プールを探すことは難しい。そして、室内プールは例外なく会員制のスパに併設されているので、乳幼児はまずお断りで、小学生以下お断りのところもある。例えば、六本木のグランドハイアットは大きくはないがとても快適な室内プールを備えているが、乳幼児はお断りだ。そして、小学生はプールに入れたとしても、更衣室やバス施設は使えず、トイレで着替えることになる。

　関西の屋外プール付きのホテルといえばウエスティン淡路の評判がいいので、先ずここを押さえてみた。しかし、よくよく見るとプールの使用にあたっては別料金が必要で、家族分を合計すると結構な額になり何だか馬鹿馬鹿しい。又、地理的に食事をホテルでとらざるを得ず、事前にみたメニューの価格と内容のバランスを考えると食指が動かない。それではということで、ここは一旦キャンセルしてＵＳＪにターゲットを絞り、ハイアットリージェンシーを予約してみたがここも今一つピンとこない。更に他のホテルも調べたがやはり決定版がない。

　そんな中、香港行きのマイレージが２万マイルであることに気がついた、大阪行きのマイルが１万５千マイルだからこれは断然香港行きの方が得だ。しかも、香港のホテルはどこも行き届いた屋外プールを備えており、当然お子さまはＯＫで別料金も請求されない。部屋代も内容を考えると東京は勿論、大阪のホテルよりも安い。よし、香港に行こうということになり、妻は買い物に期待をふくらませて喜び、ＵＳＪを取り上げられた子供たちからはブーイングを浴びることになる。

　香港フリークのはしりだったクラフトの社長に誘われたこともあって、香港には５回行ったことがある。が、最後に行ったのはなんと１３年前だ。先ずはホテル選びだが、当時とはホテルの勢力図も変わっており大いに迷う。当時はペニンシュラ、マンダリンを脅かす新興勢力の雄だったリージェントもインターコンチに名が変わってガイド本でも扱いが小さくなっている。夏に香港に行くのは初めてだが、香港に住んでいた知人のはなしによるとこの時期は台風が頻繁に襲来し、蒸し暑さも相まって観光客は敬遠するとのことだが、なるほどどこのホテルも空いていて予約が簡単にとれる。

　さんざんネットサーフィンをした末に、ダイヤモンドステータスを持っており、スイートへのアップグレードクーポンも持ってることもありグランドハイアットを押さえた。が、何となく気になり、再度ネットサーフィンをして体験談を探ってみるとグランドハイアットの評判は必ずしもよくない。

　一方、誰もが口を揃えて褒めるのはリッツカールトン。料金を見ると夏限定のお得なプランもあり、それではということでリッツカールトンに乗り換えることにする。国内の件も含めキャンセルを都合３回繰り返したわけだが、こういった場合にインターネット予約の無機質さは本当に助かる。

　リッツカールトンのサービスが行き届いていることは予約の段階ですぐ実感した。予約は現地に直接入れ、向こうからの問い合わせはメールでも済むのにわざわざ日本の予約センターを使って細部の問い合わせの電話がきた。そして、コンピュータの自動応答でないホテルの担当者からの丁寧な確認のメール。手配したリムジンの空港での見つけかたまで詳しく書いてある。今までのホテルでは体験しなかった応対に期待は大きくふくらむことになる。

　海外旅行でホテルに何を求めるのであろうか？豪華な施設、立地、ステータスなど、人によって力点を置くポイントは異なるが、僕が重視するのは先ずサービスだ。慌ただしい都会、特に香港のように「不機嫌な街」（１３年前まではそう思っていた）ではホテルには街歩きの疲れを癒し、町の不機嫌さから隔離してくれるシェルターの役目を期待する。そこでは、コンシェルジェ、フロント、ベルボーイ、ドアマン全てに笑顔と気配り、それにスムーズな応対が要求される。だから、ホテルの規模はあまり大きくないほうがいい。

　その点、高級ホテルが軒並み５００室以上の規模を誇っている中で、あえて２００室程度の規模に押さえているリッツカールトンは何となく良さそうな匂いがする。同じような感覚で選んだ前回のシンガポールのフォーシーズンズも大正解のホテルだった。

　ところで、規模を大きくしないというスタンスは心ある日本旅館と通じるものがあり、春に泊まって大感激した北陸の山中温泉の「かよう亭」は数１０室だった規模の先代の旅館を一旦廃業して１万坪に１０室という規模に再編した名旅館だった。そういえばここのお婿さんはリッツカールトン出身のホテルマンだった。

「The Ritz-Carlton, Hong Kong 」ヒーター付きの屋外プールは快適そのもの。

「Four Seasons Hotel Singapore」　シンガポールのリッツカールトンは規模が大きすぎる。香港のリッツカールトンと似たようなオーラを発しているのはフォーシーズンズの方

「かよう亭」　日本一の朝食を標榜している旅館。なるほど、その通りの素晴らしい朝食だった。朝早くたたき起こされないのも嬉しい。以前、泊まったイタリアのマジョーレ湖畔の「Il Sole di Ranco」が、かよう亭と同年代と思われる当主が先代までの大きなホテルを僅か１４室に再編し、「イタリア一の朝食を供する」と評されるやはり素晴らしい朝食を供していることとの共通性に驚いた。マルペンサ空港から車で１時間もかからないので、ミラノの高いホテルに泊まるよりはお得。事実、空港から直行してきたと思われる外国人ががビジネススーツのまま一人で夕食をとっていた。但し、正直言ってミシュラン星付きのここのレストランの味はさほどでなかった。

（初稿　２００４年９月）

☆本文中のデータは全て２００４年当時のもので、評価もその当時のものですのでご注意下さい。